Steam Machine国内発売から3か月、SteamOS 3.8.28安定版公開 - デスクトップモードのWayland既定化とGloomiaのLinux版を正直に整理
ValveのリビングルームPC「Steam Machine」が、日本での正式販売開始からちょうど3か月が過ぎた。株式会社KOMODOが2026年6月23日に販売を始めて以降、品切れと再入荷が繰り返されるほどの人気ぶりで、その渦中の9月24日には基盤ソフトウェアであるSteamOSの新バージョン、SteamOS 3.8.28が安定版として公開された。今回のアップデートには、グラフィック性能の改善に加えて、デスクトップモードの既定セッションがX11からWaylandへ切り替わったという地味だが影響の大きい変更が含まれている。Linuxデスクトップの世界では、この手のセッション変更がライブ壁紙アプリのようなツールにとって思わぬ落とし穴になりやすい。この記事では、Steam Machineという製品そのものの現状と、SteamOS 3.8.28で何が変わったのか、そしてX11のルートウィンドウにアタッチする仕組みで動くGloomiaのLinux版がこの変化とどう関わるのかを、正直に整理していきたい。
Steam Machineとは何か - KOMODOによる国内正式販売と品薄続きの3か月
Steam Machineは、Valveが開発したSteamOS(Arch Linuxベース)を搭載する、リビングルーム設置を想定した小型据え置き型のゲーミングPCだ。日本国内での正式販売は株式会社KOMODOが担い、2026年6月23日に自社のオンラインストア「KOMODO STATION」で取り扱いを開始した。価格は内蔵ストレージ512GBモデルが189,980円(税込)、2TBモデルが249,980円(税込)で、Steamコントローラーが同梱されるセットモデルも用意されている(512GB+コントローラーが204,980円、2TB+コントローラーが264,980円)。携帯機であるSteam Deckのおよそ6倍の性能を持ち、AMD FSRを利用すれば4K60fpsでのプレイも視野に入るという触れ込みだ。
発売直後から需要が供給を上回る状態が続き、7月17日と8月18日にそれぞれ再入荷が行われたが、いずれも一人一台までという購入制限つきだった。据え置き型のゲーム機やゲーミングPCとしては異例の品薄が続いていることからも、Steam DeckでSteamOSに親しんだユーザーが、テレビの前に置ける本格的なマシンを待ち望んでいたことがうかがえる。
SteamOS 3.8.28が安定版に - Steam MachineとSteam Deckに共通する改善点
そんな渦中の2026年9月24日、SteamOSの新バージョンであるSteamOS 3.8.28が安定版チャンネルに公開された。目玉はMesaグラフィックドライバの大型アップデートで、レイトレーシング性能の改善をはじめとした描画まわりの底上げに加え、VRAMの使用量が逼迫しやすい場面での安定性が大きく改善されている。ハードウェア対応の面では、次世代デバイスであるSteam Frameのワイヤレスアダプターへの暫定対応や、2015年版Steam Controller Wireless Adapterからの復帰(スリープ解除)対応も加わった。Steam Machine固有の変更としては、起動時に表示されるスプラッシュ画面がより素早く出るようになったという地味な改善も含まれている。
このアップデートはSteam DeckとSteam Machineだけを対象にしたものではない。MSI ClawやOneXPlayer、AYANEO、Legion Goといった、Valve純正ではないWindows搭載の携帯型ゲーミングPCに対しても、SteamOSベースのハードウェアサポートが広げられている。SteamOSがValveのハードウェア専用ソフトウェアから、より広いゲーミングPC市場を意識したプラットフォームへと育ちつつあることがうかがえるアップデートだ。
デスクトップモードが既定でWaylandに - KDE Plasma 6.4.3への刷新
今回のアップデートで見落とされがちだが、実務的な影響が大きいのが、デスクトップモードの既定セッションがX11からWaylandに切り替わった点だ。SteamOS 3.8ではデスクトップモードを担うKDE Plasmaがバージョン6.2.5から6.4.3へと引き上げられ、それに合わせてデフォルトのセッションがWaylandになった。以前のSteam DeckやSteam Machineは、デスクトップモードに切り替えると既定でX11セッションが立ち上がる仕組みだったが、3.8以降はこの前提が変わっている。
デスクトップモードでは、Discoverという名前のアプリストア(実体はFlatpakのリポジトリ、Flathub)を通じて、ウェブブラウザのFirefoxや画像編集ソフトのGIMP、オフィススイートのLibreOffice、開発向けのVS Codeといったアプリを導入できる。SteamOSのシステム本体は読み取り専用として保護されており、こうしたサードパーティアプリはFlatpakでサンドボックス化された形で動かすのが基本方針になっている。今回のアップデートは、そのデスクトップモードの土台そのものを最新のKDE Plasmaへ揃え、既定のセッションをWaylandへと寄せてきた格好だ。
もっとも、X11セッションが完全になくなったわけではない。開発者向けの設定や、デスクトップモードのターミナルアプリであるKonsoleからsteamos-session-select plasma-x11-persistentというコマンドを実行すれば、引き続きX11セッションに切り替え、起動時からそのセッションを既定にすることもできる。Ubuntu 26.04 LTSでX11セッションが丸ごと消えた事例と比べると、SteamOSはまだ猶予が残されている状態だと言える。
Gloomiaの視点で見るSteam Machine - X11に戻せば動く余地はあるが、正式サポート外
GloomiaのLinux版は、X11デスクトップのルートウィンドウに直接アタッチしてデスクトップの背景部分にアニメーションを描画する仕組みで動いている。この方式は、GNOMEが全面的にWaylandへ移行したUbuntu 26.04 LTSの記事でも触れたとおり、Waylandのコンポジタモデルとは根本的に相性が悪い。SteamOS 3.8のデスクトップモードが既定でWaylandになったことも、原理としては同じ制約の延長線上にある。
ただしSteamOSの場合、前述のとおりsteamos-session-select plasma-x11-persistentでX11セッションに切り替える手段が公式に用意されている。理屈のうえでは、この設定でSteam MachineのデスクトップモードをX11に固定すれば、GloomiaのLinux版が背景に描画を試みる余地は残る。とはいえ、これはSteam Machine向けに公式に検証・サポートされた組み合わせではまったくない。Steam Machineという製品自体が、リビングでのゲームプレイを主目的にしたゲーミングモード(Valveが「Gamescope」と呼ぶ専用のフルスクリーン合成システム)を主戦場として設計されている以上、デスクトップモードでのライブ壁紙運用はあくまで応用的な使い方だと理解しておくのが正直なところだ。
もう一つ実務的な注意点として、SteamOSはArch Linuxベースであり、DebianやUbuntu系で使われるapt/.debの仕組みはそのままでは通用しない。Gloomiaは.debパッケージとAppImageの両方を配布しているが、Steam Machineのようなシステム本体が読み取り専用の環境では、どのディストリビューションでも実行可能な単一ファイル形式のAppImageを使うのが現実的な選択になる。Gloomia Proのライセンスキーの使い方はOSを問わず共通の仕組みなので、Windows版やmacOS版ですでにPro版を購入済みであれば、同じキーをそのまま使い回せる点も知っておいて損はない。
ゲーミングモードとデスクトップモードを使い分ける
Steam Machineの本来の使い方は、テレビの前に据え置いてコントローラーだけで完結させるゲーミングモードだ。ゲーミングデスクトップとライブ壁紙の組み合わせ方を紹介した記事でも触れているとおり、GloomiaはWindows・macOS・Linuxのいずれの環境でも、フルスクリーンのゲームが前面にある間は自動的に描画を止める仕組みを備えている。Steam Machineのゲーミングモードはそもそもデスクトップアプリの動作対象外だが、この「ゲーム優先、背景は控えめに」という発想自体は、GamescopeがX11やWaylandのウィンドウをまとめて一つのフルスクリーン合成に差し替える設計思想と、方向性としては近いものがある。
据え置き機としてのSteam Machineをそのまま使いたい人にとっては、今回のSteamOS 3.8.28はレイトレーシング性能とVRAM管理の改善という形で素直に恩恵のあるアップデートだ。一方で、Steam MachineをちょっとしたLinuxデスクトップとしても使ってみたいという層にとっては、デスクトップモードの既定セッションがWaylandへ変わったことは、頭の片隅に置いておく価値のある変化だと言える。GloomiaとWallpaper Engineの違いについては正直に比較した記事でも触れているが、Wallpaper EngineがLinuxを公式サポートしていないのに対し、GloomiaはX11という条件つきながらLinuxでも同じ壁紙カタログを動かせる点は、選択肢の一つとして覚えておいて損はない。
まとめ
Steam Machineは日本での正式販売開始から3か月が経った今も品薄が続くほどの人気ぶりで、その最中に公開されたSteamOS 3.8.28は、レイトレーシング性能とVRAM管理の改善という形でSteam Deck・Steam Machineの双方に恩恵をもたらすアップデートになった。同時に、デスクトップモードの既定セッションがX11からWaylandへ切り替わったことは、X11のルートウィンドウにアタッチする仕組みで動くGloomiaのLinux版にとって、GNOMEの全面Wayland化と同じ系統の制約が及ぶ変化でもある。幸いSteamOSにはsteamos-session-select plasma-x11-persistentというX11への切り替え手段が残されているが、これはSteam Machine向けに公式に検証された組み合わせではない。Steam Machineの主戦場はあくまでゲーミングモードであり、デスクトップモードでのライブ壁紙運用は応用的な楽しみ方の一つだと捉えておくのが正直なところだろう。
よくある質問
Steam Machineとは何ですか、日本ではいつ発売されましたか。
Steam MachineはValveが手掛ける、SteamOS(Arch Linuxベース)搭載の据え置き型ゲーミングPCです。日本では株式会社KOMODOが2026年6月23日に正式販売を開始し、価格は512GBモデルが189,980円(税込)、2TBモデルが249,980円(税込)です。Steamコントローラーが同梱されるモデルも用意されており、512GB+コントローラーが204,980円、2TB+コントローラーが264,980円となっています。
SteamOS 3.8.28では具体的に何が変わりましたか。
2026年9月24日に安定版として公開されたSteamOS 3.8.28では、Mesaグラフィックドライバの大型更新によるレイトレーシング性能の改善、VRAM管理の大幅な改善、Steam Frameワイヤレスアダプターの暫定サポート追加、2015年版Steam Controller Wireless Adapterからの復帰対応、Steam Machineの起動時スプラッシュ表示の高速化などが盛り込まれました。対象はSteam DeckとSteam Machineだけでなく、MSI ClawやOneXPlayer、AYANEO、Legion Goといった非Valve製ハードウェアにも及びます。
デスクトップモードのWayland既定化とは何ですか、以前とはどう違いますか。
SteamOS 3.8でKDE Plasmaがバージョン6.2.5から6.4.3へ引き上げられたのに合わせて、デスクトップモードの既定セッションがX11からWaylandに変更されました。以前のSteam DeckやSteam Machineのデスクトップモードは既定でX11セッションが立ち上がっていましたが、3.8以降はWaylandセッションが標準になっています。開発者向け設定やコンソールからsteamos-session-select plasma-x11-persistentのようなコマンドを実行すれば、引き続きX11セッションに切り替えて起動時から固定することも可能です。
GloomiaのLinux版はSteam Machineのデスクトップモードで動きますか。
GloomiaのLinux版はX11のルートウィンドウにアタッチしてデスクトップの背景を描画する仕組みのため、Wayland単体のセッションでは想定どおりに動作しません。SteamOSはKDE Plasmaベースで、開発者設定からX11セッション(plasma-x11-persistent)に切り替えられる余地が残っているため、理屈のうえではUbuntuのGNOME環境よりも猶予がありますが、Steam Machine向けに公式に検証・サポートされた組み合わせではない点は正直に理解しておく必要があります。また、SteamOSのシステム本体は読み取り専用で、サードパーティアプリはFlatpakかAppImageで動かすのが基本のため、.debパッケージではなくAppImage版を使うのが現実的です。
Steam Machineの品薄状況や購入方法は現在どうなっていますか。
Steam Machineは発売直後から品切れが続き、KOMODOの公式オンラインストア「KOMODO STATION」では7月17日と8月18日に再入荷が行われました。いずれも一人一台までの購入制限が設けられており、根強い人気がうかがえます。最新の在庫状況はKOMODO STATIONの公式サイトやSNSアカウントで確認するのが確実です。
Steam Machineでゲームをプレイしながらライブ壁紙を使うと負荷は増えますか。
Steam MachineのゲーミングモードはGamescopeという専用のフルスクリーン合成システムで動いており、Gloomiaのようなデスクトップアプリはそもそもこのモードでは動作対象外です。GloomiaはWindows・macOS・Linuxのいずれでも、フルスクリーンのゲームが前面にある間は自動的に描画を止める仕組みを備えているため、デスクトップモードで使う場合も、ゲームを前面に出している間に余計な負荷が上乗せされる心配は基本的にありません。